「部分的映像授業の勧め」(塾講師・学校教員向け)
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目次
第1章
映像授業の進化と現状
第2章
タイプ分け1(時間数)
第3章
タイプ分け2(講師の顔出し)
第4章
タイプ分け3(扱う内容)
第5章
映像授業全体の特徴
第6章
場面ごとの活用例
第7章
最後に
第1章
映像授業の進化と現状

この10年で、「映像授業」は大きく変わりました。

現在、40代半ばの私が大学受験生だったころには、映像授業というと「予備校の講義の録画」でした。講義に参加できなかった時や、講師がその校舎に来ることができない環境下で「対面講義」の「代用」として用いられるものでした。


ところが、今は「対面講義の代用」ではなく、対面授業のサポートに使うことを目的としたものや、生徒が独習で使うことができるものなど、様々な形式の映像授業がみられるようになりました。また(賛否両論はありますが)中高生の間にも、わからないことがあったときには、教科書・参考書だけではなく、YouTubeの動画で調べるという「文化」もできてきました。

このような状況になり、「映像授業か対面授業か」といずれかを選ぶのではなく、対面授業を効率的に行うために、「映像でもできる部分」「映像のほうが効率が良い部分」を、映像授業で行うことができるようになってきたのです。


今日はこの対面授業を効率的に行うための「部分的映像授業の活用」ということについて、学習塾講師ならびに学校現場の先生方に向けて、「理科の映像授業講師の立場」から、実践例も含め、お話をさせていただきたいと思います。


さきほどの内容と重なりますが、映像授業といっても、様々なタイプのものがあり、メリット・デメリットも大きく異なるため、どのような場面で、どのタイプの映像授業を使うとよいのかがわかりづらくなっている状況です。

そのため、まずは、映像授業を「時間数」「講師の顔出し」「扱う内容」の3つの観点でタイプ分けしていき、そのあとで、私個人の活用方法について、「個別指導塾」「集団授業一斉講義(塾・学校)」「集団授業反転授業(塾・学校)」という、3つの場面を例にお話していきたいと思います。(また、関わらせていただいた映像授業については、参考として名前を挙げさせていただいています)


第2章
タイプ分け1(時間数)

当初の映像授業は「講義録画」から始まったため、90分・60分などの長時間のものがほとんどでした。そこから、YouTubeの台頭や、通信環境の整備、生徒個々の端末所持などにより、手軽に、気になるところだけを調べるための短時間(5分から15分)の動画が増えてきました。

この使い分けとしては、授業をそのものを映像授業で置き換えるのであれば、当然、時間数が60分、90分という長時間のもののほうが良いことになりますし、わからないものを調べるための自習用のツールとしての活用や、動画で見せたほうがわかりやすい単元を見せるという活用であれば、短時間のものがよいことになります。


長時間(60~90分): 授業の代用

(授業録画)

短時間(5分~15分): 自習用ツール、ピンポイントでの解説

(TryIT(YouTube家庭教師のトライ)、学びエイドなど)


第3章
タイプ分け2(講師の顔出し)

注目されることが少ない特徴ですが、講師の顔出しがあるかどうかも重要なポイントです。

当初の映像授業は「講義録画」のため、講師と黒板がそのまま写されているものでした。ところが、タブレットの画面共有機能等で、いわゆる板書にあたる部分のみを動画として、講師の顔が見えない授業も多くなってきました。

この使い分けとしては、映像授業で「モチベーションを上げる」など、やる気にかかわる部分にも影響を与えたい、講師の動きで画面を見続けさせたいなどの場合には、顔出しがある講座が良いことが多いです。それに対して、問題・過去問の解説など、画面の情報量を減らして、内容に集中させたい場合、辞書的に必要な部分の情報を提供したい場合などは、講師の顔出しがないもののほうが、内容が身につきやすいかと思います。


顔出しあり: モチベーションを上げることが必要、画面を見続けさせる働きが必要。

(TryIT(YouTube家庭教師のトライ)など)

顔出しなし: (情報量を減らして)内容に集中させたい

(学びエイド・ウイニング(好学出版))


第4章
タイプ分け3(扱う内容)

通常の授業においても、「単元の導入」―「教科書等の解説」―「問題演習」のように扱っていくことが多いかと思いますが、これは映像授業でも同じです。そのため、映像授業を導入するときには、どの段階を「映像授業」で行い、どの段階を「対面授業」で行うかを決めていくことになります。

たとえば、予習として単元の導入を映像授業で見せておき、その後に、教科書・テキストの解説を行うことで、その単元についての基本知識の格差を埋めることができます。

また逆に、モチベーション維持や興味を持たせることに大きくかかわる単元の導入は対面授業で行い、その後の教科書の読み進めなどは、個々のペースにあわせて映像授業で行うなども考えられます。その後、対面授業で、教科書単元についての理解ができているかどうかを「反転授業形式」で行うことも可能です。


さらには、宿題でワークの問題を課すときに、それを「映像授業付き」のものにすることで、生徒が家で問題を解いて、わからないことがあったときに、その解説を映像で確認することができるようになります。

たとえば、塾用教材のウイニング(好学出版)では、有料のサービスとして、問題1問1問につけられた動画解説を見ることができます。さらに塾用教材だけでなく、市販教材にも、ページ内のQRコードを読み取ると、解説動画を見ることができるようなものも増えてきました。

最近では、小学生用の教科書準拠の市販教材(「教科書ぴったりワーク(啓林館)」など)にもQRコードがつけられているものがみられるようにもなりました。これらを踏まえて、どの内容(段階)かを映像授業で行うことで、「対面授業で行うべき内容」に注力することができるようになると考えています。


使用目的

単元の導入 :前提となる知識を揃える・モチベーション維持

教科書等の解説:一人一人にあった進度で進める環境・反転授業準備

問題演習 :自宅でのワーク演習


第5章
映像授業全体の特徴

これらを踏まえて、簡単に、映像授業全体の特徴をまとめておこうと思います。


まず、生徒の側からの特徴としては

「好きな時に、好きな環境で」

「自分のペースに合わせて」見ることができ

「気になるところは見直すこともできる」という特徴があります。


また運営側の特徴としては

講師の不足を気にすることなく、また、専門外の単元を映像授業に担当することで、授業準備の負担を減らすことができるのが大きな特徴です。もちろん、今回の主題である「映像授業を部分的に導入する」ことで、より重要な部分を多くの時間をかけて、対面授業で行うことができることも挙げられます。


また今回は触れませんでしたが、同じ単元であっても、複数の映像授業を使い分けることで、「用語を耳から聞くことが得意だ」「図などを目で見ることが得意だ」などという生徒の特性に合った学習環境を作っていくこともできます。


ただ、顔出しを含む、どのようなタイプの授業であっても、対面の授業に比べると、人を感じることが少ないので、「見続けるのに努力が必要」な点、「学習のモチベーションを維持するのが難しい」点などがあります。この部分は意識して、マンパワーで補う必要があることが多いです。

また映像授業によっては、個人が撮影・公開しているものも多く、正しいとは言えない内容を含んでいるものもあるのが実情です。その意味では、大手が提供しているもので、校正が入っているものを選択して使用することが必要なこともあります。


第6章
場面ごとの活用例

ここまでの映像授業のタイプ・特徴を踏まえて、最後に、私個人での映像授業の活用について「個別指導塾」「集団指導(講義形式)」「集団指導(反転授業形式)」に分けて、お話をしていきたいと思います。



【活用例1(個別指導での活用)】

個別指導塾では授業時間が少ないことを踏まえ、効率的に、個々に合わせた内容を行う必要があります。そのため、モチベーションの維持に関わりやすい「導入」を対面授業で行い、その後、映像授業で「教科書内容」を見てもらい、気になるところを対面授業で質問してもらうという流れをとっています。その後、問題演習を宿題として課し、家で必要な部分のみの解説授業を見てもらったうえで、気になるところを質問してもらうという形式をとっています。

この形式では、対面で、モチベーション維持・質問対応はしっかりとできているので、映像授業の部分は、講師の顔出しがない授業でも可能だと考えています。


単元の導入: 対面指導

教科書等の解説: 映像授業(質問は対面)―顔出し有無いずれでもー長時間

問題演習: 映像授業(質問は対面)―顔出し有無いずれでもー短時間

【活用例2(集団授業での活用(講義形式))】

塾・学校の集団授業で「教科書内容の講義」を中心とする場合は、教科書単元を扱う前の用語知識・イメージの格差を減らすために、導入は映像授業で予習してきてもらうのが理想です。

そのうえで、教科書の解説を対面授業で行い、その後、問題演習を宿題として課し、家で必要な部分のみ解説授業を見てもらう形をとります。そして確認テストの実施やその解説、別解の解説、発展的内容などを対面の授業で行う形式をとっています。


単元の導入: 映像授業―顔出し有のほうが引き込みやすいー短時間

教科書等の解説: 対面授業

問題演習: 映像授業(質問は対面)―顔出し有無いずれでもー短時間



【活用例3(集団授業での活用(反転授業形式))】

反転授業形式の場合は、まず学習の前提となる「用語知識・イメージは通常の授業より多めに時間をとって」しっかり用語を使える段階になるまで対面で行います。その後、教科書単元は映像授業で行ってもらいます。その後の対面授業では、その映像授業で学んだことをもとにして、自分の言葉でまとめる・発表することを行います。また、授業後の問題演習時には、個々のペースで解説の映像授業を見てもらう形式をとっています。


単元の導入: 対面指導

教科書等の解説: 映像授業(質問は対面)―顔出し有のほうが引き込みやすいー短時間でも長時間でも可能

問題演習: 映像授業(質問は対面)―顔出し有無いずれでもー短時間




このように「映像授業」と一口に言っても、そのタイプごとにメリット・デメリットが大きく異なり、対面授業のどの段階を重視するかによって、どのような映像授業との組み合わせが良いかが異なります。


第7章
最後に

最初の内容とも重なりますが、映像授業と対面授業のいずれがよいかという対立で考えるのではなく、あくまでツールの1つとして映像授業があり、それを用いて、効率化できる部分があれば使っていくというのが良いのかと考えています。教科書のみの使用よりも、資料集があったほうが伝える手段が増える分、授業の幅は広がるのと同じように、対面の授業だけでなく、家でも使える「映像授業」を併用することで、伝える手段を増やして、より対面で行うべき部分に注力できるよう応援しています。

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